池田孤邨

いけだ　こそん

Ikeda Koson

1803年〜1868年

越後国水原近辺（現・新潟県阿賀野市）

作家・作品ジャンル

画家

池田孤邨（いけだこそん）／絵師
　草花図屏風を得意とした、酒井抱一の高弟。若い頃から尾形光琳に傾倒する一方、水墨を用いた山水図や物語絵も近年見出され、幅広い制作活動を行っていたことが伺える。抱一、鈴木其一とともに、江戸琳派を代表する画家の一人。光琳や抱一の後継者として意欲的に活躍し、『光琳新撰百図』『抱一上人真蹟鏡』を出版している。

History

1803年: 　越後国水原近辺（現・新潟県阿賀野市）に生まれる。名は三信（みつのぶ）、三辰、字（あざな）は周二（弐）、通称・周次郎。孤邨（村）、蓮菴、画戦軒、煉心窟（れんしんくつ）、舊松軒（きゅうしょうけん）などと号す。; 　10代後半頃に江戸へ出て、絵師・酒井抱一に絵を学ぶ。

1826年: 　『隅田川望遠図』（江戸東京博物館蔵）制作。抱一を訪問した友人2人を隅田川の周遊でもてなした時の、夕暮れの情景を描いたもの。隅田川を広大に捉え、富士筑波を東西に収めた本図は、遠近法による風景表現が用いられており、江戸琳派の中でも異彩を放っている。; 　孤邨は抱一の弟子・鈴木其一（すずききいつ）ほど多作ではなく、作風も光琳様式によるものから文人画風の水墨山水図、実景図、風俗図など多岐に渡っている。; 　四季草花流水屏風（細見美術館蔵）は孤邨初期の琳派様式による小屏風で、金箔地に春草から秋草までがにぎやかに配されている。落款に「法橋光琳孤村白恨居士三信畫之」と記されていることから、光琳を強く意識したことが伺われる。一方、葛や女郎花、烏瓜、白膠木（ヌルデ）などは抱一好みのモチーフで、光琳様式と抱一画風の入り混じった作風となっている。

1828年: 　抱一の没後、30代半ば頃から一時深川冬木町に住み、40代後半には両国久松町に居を構えて没年まで過ごす。; 　深川時代の作品は関東大震災で多くを失ったと伝えられており、中年期の動向には不明な点も多いが、両国久松町時代は屏風もたびたび手掛け、高い名声を得ていた。; 　; 　著名の特徴から、『藤図屏風（6曲1隻）』（福岡市美術館蔵）は、深川冬木町時代に制作されたと考えられている。銀箔地に大きく白藤を描き、画面の随所で長く伸ばされた蔓が複雑な曲線を展開。藤は抱一が好んで描いたもので、其一にも多くの作例がある。紫の花や蔓は江戸琳派を象徴する植物のひとつと言えるが、銀地に白藤という取り合わせや6曲屏風に藤のみを描く試みは孤邨の本図をおいて他に見当たらない。

1842年: 　『雪中常盤図』（個人蔵）制作。本図は、孤邨40歳、深川冬木町時代の貴重な作例。源義朝の側室常盤御前が、今若、乙若、牛若の3人の息子とともに雪の中逃避行を続け、民家の軒先で休む場面を描いている。雪の積もる様を絹地を塗り残して表し、淡墨で雪深い様子を示しているのが特徴的。抱一や其一の物語絵とは異なる、孤邨独自の人物表現が見られる。署名に「天保壬寅夏貢雪日　孤村畫」とある。; 　; 　「煉心窟」の印や著名の書体から、『百合図屏風（2曲1隻）』（遠山記念館蔵）は、両国久松町時代の前半、孤邨50代に制作されたと考えられている。屏風表面の金地に白百合、裏面の銀地に薄紅色の百合を展開。金地に一種類のモチーフのみを連ねる構成は、光琳の『燕子花図屏風（国宝／根津美術館蔵）』などを想起させるが、孤邨は百合の花ひとつひとつに薄緑で陰影を描き、花や蕾の向きも違えて匂い立つような百合の一叢を表している。表裏金銀の取り合わせは、抱一に倣った趣と見られる。

1856年: 　『紅葉に流水図屏風』（フリーア美術館蔵）制作。6曲1隻屏風の表面に、色鮮やかな紅葉が流水の上に浮き沈みし、水辺には秋草が咲き乱れる様子を描いている。『光琳百図』に掲載されるような光琳の楓図屏風に影響を受けながら、抱一の『夏秋草図屏風』のモチーフも取り入れている。「『雨風にちれる花紅葉露霜にをれ伏す萩芒』が雅で哀れ深い我が国の心である」と孤邨は述べており（『抱一上人真蹟鏡』序文）、自身の信念を謳い上げた晩年の大作。; 　対照的に、裏面には水墨山水が描かれている。

1860年: 　『牡丹に孔雀図絵馬』（浅草寺蔵）制作。複雑な岩の上に佇む雌雄の孔雀、周囲には咲き乱れる白い牡丹、足元には流れ落ちる渓流を描いている。金箔を配した豪華な絵馬で、大きく記された孤邨の署名にも大仕事を収めた自負が感じられる。; 　もとは文政年間に内藤昌忠・克昌が奉納した『松樹孔雀図』（絹本）があり、それを内藤昌言が弘化4年に補修、さらに万延元年に孤邨に額絵として新たに描かせたという経緯がある。

1864年: 　62歳で『光琳新撰百図』を出版。

1865年: 　『抱一上人真蹟鏡』を出版。抱一の作品集として刊行したもので、上下2巻からなる。其一の後を受け、光琳や抱一の後継者として意欲的に活躍した。; 　『光琳新撰百図』『抱一上人真蹟鏡』両書の孤邨序文には「大皇国」「皇国魂」という単語が多出し、幕末の江戸において孤邨が勤王思想を抱き、その文脈において光琳や抱一を顕彰していることも注目される。

1868年: 　66年の生涯を閉じる。（※生年没年に関しては諸説あり）

▼参照サイト

http://www.kotoba.ne.jp/word/10/%E6%B1%A0%E7%94%B0%E5%AD%A4%E9%82%A8

▼参照書籍

別冊太陽244 江戸琳派の美 (別冊太陽日本のこころ 244) | 岡野智子 |本 | 通販 | Amazon

酒井抱一 (別冊太陽日本のこころ) | 仲町啓子 |本 | 通販 | Amazon

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