伝統を受け継ぎながらも独自の琳派様式を確立した、江戸後期の絵師。酒井抱一の一番弟子で、抱一没後は多くの弟子を養成し、琳派様式拡大に貢献した。抱一画風を習得する門弟時代、大胆で明快な作風に転じた壮年期、より自由な立場で多様な作品を描いた晩年と、画風の変遷をたどるのも楽しい。代表作は、『風神雷神図襖』や『四季花鳥図屏風』。
鈴木 其一
すずき きいつ
Suzuki Kiitsu
1796年〜1858年
江戸中橋(現・東京都中央区京橋周辺)
- 作家・作品ジャンル
- 1796年
- 江戸中橋(現・東京都中央区京橋周辺)に生まれる。名は元長、字は古淵。父は近江(滋賀県)の生まれで、紫染の元祖とされる。
- 1813年
- 少年の頃から絵を好み、18歳で絵師・酒井抱一の内弟子となり、本格的に修行を始める。
- 1817年
- 兄弟子・鈴木蠣潭(すずきれいたん)没。抱一の計らいで蠣潭の姉・りよと結婚し、鈴木家の養子となって家督を継ぐ。
- 抱一の実質的な筆頭弟子となる。
- 1825年
- 吉原江戸町1丁目の名主・西村藐庵が、吉原の故事・古物研究の成果をまとめた書で、抱一が賛辞の序文を寄せた『花街漫録』(国立国会図書館蔵)に、挿絵を描く。浮世絵の縮図では衣装の模様など細かい部分まで抜かりなく描かれており、三浦屋の遊女・高尾と薄雲の美人画は、『雪月花三美人図』に描かれる三美人の原型になったと言われている。
- 1829年
- 1828年に抱一が亡くなったのをきかっけに、一代限りの御用絵師となる。
- 以後、多くの弟子を養成して江戸琳派様式の拡大に貢献した。
- 1831年
- 『山水図』(大倉集古館蔵)制作。「天保辛卯新春」の年記があり、天保2年、其一36歳の正月の作品。扇面型に淡彩で中国文人画の青緑山水図を模して描いている。抱一の『絵手艦』(静嘉堂文庫美術館蔵)や『抱一上人真蹟鏡』(早稲田大学図書館蔵)にも同様の山水図が見出されている。
- 1833年
- 2月から11月にかけて、絵画修行のため、京都奈良を中心に、姫路、太宰府まで長期旅行をする。この記録は『癸巳(きし)西遊日記』(京都大学附属図書館蔵)として残されており、旅程のほか、風景スケッチや古画の縮図などが描かれている。この西遊は、其一の画風展開上で重大な契機となった。
- 1836年
- 老若男女、さまざまな職業の人々を歌合形式で詠んだ句集『紅叢紫籙(こうそうしろく)』(東京大学総合図書館蔵)に挿絵を描く。風俗人物画にも筆の冴えを見せた其一の観察眼が感じられる。
- 『風神雷神図襖』(東京富士美術館蔵)は、「祝琳斎」の署名と「噌々」の朱文円印から、其一40代前半頃に制作されたものと思われる。宗達、光琳、抱一と継承されてきた風神雷神図様を、其一は襖の大画面に広々と表した。絹地を活かし、たっぷりと滲みを利かせた黒い雨雲に乗る二神は淡彩で軽やかに描かれ、開け締めをする襖にふさわしく、左右への躍動感にあふれている。
- 1837年
- 狂歌集『柳花集』(千葉市美術館蔵)に挿絵を描く。夜桜を版画でシルエット調に仕上げるなど、繊細な感覚と洗練された趣味を見せている。
- 1841年
- 『迦陵頻図絵馬(かりょうびんずえま)』が浅草寺に奉納される。迦陵頻は、迦陵頻伽という極楽浄土に住むとされる上半身が人の姿をした想像上の鳥に由来する雅楽(舞楽)の一曲名で、不言楽とも言われる童舞。これを主題とした『迦陵頻図絵馬』は、天冠をかぶり背に鳥羽の作り物を着けた舞人が2人、手に持った銅拍子を打ちながら舞を見せている。
- 琳派の絵師たちは工芸意匠を多く手掛けており、本絵馬もその一つ。
- 1845年
- 『三十六歌仙図』(出光美術館蔵)制作。本紙は『光琳百図』に見られる図様だが、其一は描表装(かきびょうそう)を施している。天地は扇面流し、中廻し・柱は錦裂(きんぎれ)、一文字・風帯は銀泥の地に金泥で花鳥紋を浮き上がらせ、露(風帯の先端につける小さな房飾り)までを胡粉で細密に描き加えている。天地の目もあやな配色と蠕動する流水には、其一の個性の一端がよく示されている。
- 1852年
- 『双鶴春秋花卉図』(板橋区立美術館蔵)制作。中幅に双鶴を描き、右幅に梅、牡丹、蒲公英、左幅に楓、菊、露草を描いた。
- 其一は植物の形状に感覚を集中させ、写実から得た現実の断片を心象のうちに再構成してみせる。そこに超現実的な世界が展開され、近代絵画に直結する新しさが生まれることとなった。
- 1854年
- 其一、59歳の傑作・『四季花鳥図屏風』(個人蔵)制作。右隻には春から夏にかけての植物が約26種類、左隻には秋から冬にかけての植物が約22種類描かれており、これらに水流や岩が配され、4種9羽の小禽が遊ぶ百花繚乱の花園が出来上がっている。本図からは、其一の多面的造形感覚、明晰な形態、鮮やかな色彩対比、醒めた視覚などが感じとれる。
- また、江戸時代初期、伊年系以来の歴史をもつ琳派系草花図屏風が改めて意識され、幕末的転生を果たしたともみえる。其一は琳派における優れた伝統の余燼をかきたて、創造的にその掉尾を飾った。
- 1856年
- 『菊慈童図』(個人蔵)制作。法華経の経文の霊験で不老不死の薬となった菊の露を飲み、山中で700年も生きながらえているという美少年が、経文を讃えて楽しげに舞う姿を描いた。
- 琳派の芸術家には、能や謡曲と密接な関係に結ばれるものも少なくない。中でも其一は能謡曲に関心が高く、舞台で演じられる能をそのまま描くことができた。そこには、其一の趣味とともに、能謡曲が広く行き渡った時代の潮流が反映されている。このように、能謡曲との関係においても、其一が光琳の私淑者であったことを証明している。
- 1858年
- 9月10日、63年の生涯を閉じる。
鈴木其一 江戸琳派の旗手 サントリー美術館
https://intojapanwaraku.com/art/1780/
▼参照書籍
・酒井抱一と江戸琳派の全貌 大型本 – 2011/9/1
・酒井抱一 (別冊太陽 日本のこころ) | 仲町 啓子 |本 | 通販 | Amazon
・鈴木其一 琳派を超えた異才 (ToBi selection) | 河野 元昭 |本 | 通販 | Amazon
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