三岸好太郎

みぎし　こうたろう

Kotaro Migishi

1903年〜1934年

北海道札幌区（現・札幌市）

作家・作品ジャンル

画家

三岸好太郎 / 画家
　札幌市生まれ。旧制中学時代に油絵に興味を抱き、画家を志して18歳で上京。1923年、第1回春陽会展で『檸檬持てる少女』が入選。中国旅行をきっかけに『マリオネット』などの道化を主題とした作品を描く。1932年末からは前衛絵画に関心を持ち、『オーケストラ』を制作。晩年はシュールレアリストに傾倒し、蝶と貝殻を中心に描いた。

History

1903年: 　北海道札幌区（現・札幌市）に生まれる。

1918年: 　油絵に興味を抱き、中学の美術クラブ霞画会に属し、図画教師・林竹治郎の指導を受けて制作する。

1919年: 　11月、俣野第四郎、戸村真次郎ら一中生で「アネモネ画会」を作り、学外で展覧会を開催。

1920年: 　2月、霞画会例会展（校内）に『雪景色』『肖像』を出品。; 　6月、修学旅行中に喫煙が見つかり、停学処分を受ける。; 　11月、札幌で初の公募展として開催された北斗雅会美術展（丸井呉服店）に中学生としてただ一人、『ジュピターの幸福』『不満』が入選。

1921年: 　3月、札幌第一中学卒業。東京美術学校建築科に入学し、親友・俣野第四郎と上京。白樺美術展でセザンヌ、ゴッホを初めて見て驚嘆する。; 　雑司ヶ谷や目白の下宿を俣野と転々とし、新聞配達、夜なきそば売り、日本画家・大野麦風の書生を経て、下谷郵便局の臨時雇いになり、絵画修行を続ける。

1922年: 　6月、第3回中央美術展（日本橋・三越）に『静物』が入選。

1923年: 　5月、第1回春陽会展（上野・竹之台陳列館）に『レモン持てる少女』（北海道美術館蔵）が入選。; 　貧乏暮らしのためにキャンバスが買えず、カルトンに、好太郎を庇護した桑山太市朗の絵具を使って描いたという。この絵の稚拙的な扱い方は当時、国内でかなり流行していたアンリー・ルッソーなどのプリミティーフな作風に倣うものであり、また、黒色の勝った色調は草土社風の好みに通ずるところもあるが、たっぷりと豊かな筆致や少女の服の朱の美しさに、好太郎の個性を見ることができる。

1924年: 　3月、第2回春陽会展（日本橋・三越）に『兄及び彼の長女』『友人肖像』『崖』『春の野辺』が入選し、春陽会賞を首席で受賞。画壇の注目を集める。

1925年: 　3月、第3回春陽会展（上野・竹之台陳列館）に『裸体』『少年』『冬の崖』『美しき少女』『少女の像』が入選。

1926年: 　2月、第4回春陽会展（上野・竹之台陳列館）に『宇治風景』『竹藪』が入選、春陽会無鑑査に推薦される。; 　9〜12月、同郷の画友・岡田七蔵と中国旅行。上海、杭州、蘇州などを訪れる。; 　この頃彼は制作の新たな方向を模索しており、当時画壇の一傾向であった日本画風の表現なども試みています。中国で知ったサーカス、道化、白馬などは、やがて三岸の作風の展開に転機をもたらすもののひとつとなる。

1929年: 　4月、第7回春陽会展（東京府美術館）に『少年道化』（東京国立近代美術館蔵）『お面の男（マスクをつけた道化）』（北海道美術館蔵）などを出品し、道化をモチーフとした作品を発表。この特異な主題と表現は、彼の新しい境地を示すものとなり、その後1932年にかけ、どこか憂愁を感じさせる道化やマリオネットなど一連の作品が制作される。

1930年: 　11月、新しい美術団体・独立美術協会の創立に加わり、会員になる。; 　この頃より作風は奔放さを増し、道化の主題をはじめ、女性像、風景、静物など、多彩な制作が意欲的に続けられる。

1931年: 　1月、第1回独立美術協会展（東京府美術館）『マリオネット』（北海道美術館蔵）『道化と馬』『馬に乗る道化』『赤い道化』などを出品。; 　『マリオネット』は好太郎の天賦の才が鋭く示された傑作の一つ。濃緑の深い豊かな色層を畳み込んだビロードの暗幕に情感の光を浴びて、薄桃色の肢体を浮かび上がらせた大きな顔の異様な表情をした操り人形が、不思議な動感を見せながら悪魔の哄笑を思わせるグロテスクな味感を漂わせており、深々としたバックの重みもあって、堂々とした画格を備えている。; 　8月、第1回独立美術協会夏期講習会（新宿・紀伊国屋講堂）の講師を務める。

1933年: 　3月、第3回独立美術協会展（東京府美術館）『オーケストラ』（北海道美術館蔵）などを出品。本作をはじめとするひっかき線による作品や抽象作品、コラージュ（貼り絵）など、さまざまな前衛的な手法を試み、斬新な魅力あふれる表現が生まれる。; 　8月、自宅を申込所とした独立美術協会夏期講習会（独立美術研究所）の講師を務める。

1934年: 　3月、第4回独立美術協会展（東京府美術館）に『飛ぶ蝶』（北海道美術館蔵）、『海洋を渡る蝶』、『ビロードと蝶』、『貝殻』、『のんびり貝』（北海道美術館蔵）などを出品。; 　同月、長編詩『蝶ト貝殻』、淡彩素描10点からなる手彩色素描集『蝶と貝殻』（限定100部）を私家出版。; 　三岸の作風はまたも大きく変貌し、蝶や貝殻がモチーフとなり、夢幻的な光景が描かれる。蝶や貝殻はシュールレアリストの作品の小道具としてしばしば見られるものであり、デ・キリコやイーブ・タンギーからのヒントもあったと思われる。前年秋頃から好太郎は旅行カバンに貝殻を入れて持ち歩き、また博物図鑑の蝶の絵を見ることが多かったというが、中学生時代、北海道大学農学部の新島善徳博士のもとで昆虫標本画作製のアルバイトをしていたこともあった。; 　6月、胃潰瘍の吐血で倒れる。; 　7月、心臓発作を併発して死去。31年の短い生涯を終える。

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