伊藤若冲

いとう　じゃくちゅう

Itho Jyakuchyu

1716年〜1800年

京都

作家・作品ジャンル

画家

江戸時代中期に活躍した日本の絵師。
青物問屋の元に生まれ、家業を引き継ぐ。
代表作は、1758年から10年近くをかけて制作した花鳥画『動植綵絵』で、30幅に及ぶ大作。
2016年、クリエーター集団「チームラボ」が『鳥獣花木図屏風』や『樹花鳥獣図屏風』をモチーフにしたアート作品「Virvana」を展示し、話題となる。

History

1716年: 　2月8日、京都高倉錦小路の青物問屋「枡屋（枡源）」の長男として生まれる。父は三代目伊藤源左衛門（宗清）、母は近江の武藤家出身。

1738年: 　父・宗清の死により、若沖が家督を相続。四代目当主になる。

1747年: 　禅僧・漢詩人である大典顕常、「大盈若冲」の句を含む銘を売茶翁の注子（水差し）に記す。

1752年: 　元旦、鶏を写した『松樹番鶏図』を制作。; 　この頃より大典と交わり、若冲居士と号す。

1755年: 　3歳下の弟・白歳（宗巌）に家督を譲り、＜自然＞を描く絵画に専念する。

1758年　: 　『動植綵絵』の連作に着手。; 　『動植綵絵』は、文字通り動植物を描いた彩色の絵（花鳥画）のことで、若冲の最高傑作として名高いだけでなく、日本美術史に残る傑作である。

1759年　: 　鹿苑寺より依頼を受けて、大書院の水墨障壁画50面を制作。; 　『雪中鴛鴦図（せっちゅうえんおうず）』（宮内庁三の丸尚蔵館蔵）制作。夫婦和合の象徴である鴛鴦（おしどり）は寄り添って描かれるのが一般的だが、若冲は必ず雌雄を離して雌だけを水に潜らせている。この姿は「女性的なものの抑圧」を表現していると解釈されており、雪の凍りついた柳の枝が、雌を突き沈める鋭い針のような形状をしているのが衝撃的である。; 　若冲の著色画はほとんど輪郭線がなく、大部分の形状は色の面で表現されているのが特徴的である。

1760年: 　売茶翁から「丹青活手妙通神」の一行書（宮内庁三の丸尚蔵館蔵）を贈られる。

1761年: 　禅僧・無染浄善、『海老図』に着賛。

1764年　: 　金刀比羅宮奥書院上段の間に『花卉図』、二の間に『山水図』、三の間に『杜若図』、広間に『垂柳図』を制作。

1765年: 　相国寺に『釈迦三尊像』3幅、『動植綵絵』24幅を寄進。; 　『動植綵絵』24幅は、若冲が1758年からほぼ10年かけて制作したもので、花鳥画30幅の連作の一部。裏彩色（画面の裏にも絵具を入れる技法）によって描かれており、表からの彩色と絹目を透かしてほのかに見える裏からの彩色が重なり合って、表からだけでは作れないような色合いに仕上がっている。また、表に塗られた顔料が時間の経過とともに変色や剥落するのに対して、裏に塗られた顔料は画絹（がけん）と肌裏紙にはさまれるため光や空気の影響を受けにくく、物理的な損傷も受けにくい。このように、若冲は絹地と絵具を巧みに操って色鮮やかな世界を創出した。

1766年: 　相国寺の虫干しで、『釈迦三尊像』と『動植綵絵』24幅が中の間に掛けられる。この時、残りの6幅を追加したと言われている。; 　『紅葉小禽図（こうようしょうきんず）』（宮内庁三の丸尚蔵館蔵）を制作。幾何学的な形への好みは続いているが、激しく屈折する折れ線や蛇行し渦巻く曲線はない。『動植綵絵』終わりに制作されたこの図は、若冲の様式が新しい段階に入ったことを示している。

1767年: 　大典と淀川を下り大阪へ行く。この経験から、『乗興船（じょうきょうしゅう）』（京都国立博物館蔵）を制作。伏見から天満橋に至る現実の風景を描きながらも、明から伝えられた拓版画の技術、大典の詠む漢詩、水墨山水画のような若冲の描写が、中国文化の産物の如き装いをこの画巻に与えている。; 　拓版画は、通用の木版画とは逆に、下絵を裏返しにせずそのまま版木に当て、地の部分ではなく描線の部分を彫ってへこませている。彫り終えた版面に料紙（りょうし）を乗せ、表から墨をつけことで彫った図が紙に白く残り、地は墨を載せて黒く輝く陰画（ネガ）のような画面ができあがる。

1769年: 　相国寺の観音懺法で、『釈迦三尊像』と『動植綵絵』が方丈に掛けられる。

1776年: 　石峰寺の『五百羅漢石像』の制作に着手。

1787年: 　真仁法親王より注文の襖絵を納める。

1789年: 　大阪・西福寺の『仙人拳群鶏図（さぼてんぐんけいず）』（重要文化財／西福寺蔵）、『蓮池図（れんちず）』（重要文化財／西福寺蔵）『山水図』制作。; 　京都・海宝寺の『群鶏図障壁画』（京都国立博物館蔵）を制作。; 　『仙人拳群鶏図』は、左右3面ずつ群鶏が三角形を作る安定した構図を、デフォルメされたサボテンと鶏の尾羽の動きが揺さぶっている。奔放な姿態の鶏は水墨画で描かれていた形だが、ここで再び濃彩の精密描写と融合することで、新しい美しさを作り出している。; 　『蓮池図』は、『仙人拳群鶏図』の裏面に仏間の襖絵として描かれたもの。蕾から花が散った後の実までの変化が、初期の水墨画のような固い画法で表されている。蓮の葉は楔（くさび）状に裂け、虫喰いの穴を開け、痛ましく毀（こぼ）たれている。荒涼たる惑星を思わせる風景は、天明の大火で罹災した、老齢の若冲の寂しい心像を感じさせる。

1790年　: 　唯一の著色の画巻『菜蟲譜（さいちゅうふ）』（佐野市立吉澤記念美術館蔵）を制作。巻頭から果蔬（かそ）が並び、半ばから虫と小動物の遊戯となり、巻末を再び野菜が締めくくる。後半部に見どころが多いが、『動植綵絵』と比較すると描かれたものの生気が乏しいのは、画風に加えて大病を患った年の制作のためと言われている。

1795年: 　『象と鯨図屏風』（MIHO MUSEUM蔵）制作。; 　若冲80代の水墨画で、自然の形状を破ってわき出る画家のエネルギーを感じさせる。白黒の巨体を対比する奇抜な屏風が、空想の世界に誘う。

1796年: 　9月27日、東山新書画展観に絹本『五百羅漢図』を出品。

1800年: 　9月10日、85年の生涯を閉じ、石峰寺に土葬される。

▼参照サイト

・https://paradjanov.biz/jakuchu/about/54/

・https://media.thisisgallery.com/20219510

▼参考書籍

・もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品　改訂版 (アート・ビギナーズ・コレクション)

・よみがえる天才１　伊藤若冲 (ちくまプリマー新書)

・伊藤若冲作品集

・若冲伝

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