児島善三郎

こじまぜんざぶろう

Kojima Zenzaburo

1839年〜1962年

福岡県生まれ

作家・作品ジャンル

画家

児島善三郎 / 洋画家
福岡県生まれ。明治から大正にかけて活躍した洋画家。独立美術協会の創設者の一人であり、中心的作家として、同会の発展に尽くすと共に多くの作品を発表。主に風景画や肖像画を描き、西洋の手法に真正面から取り組みながら、日本人らしいきめ細やかで、清潔で、森厳典雅なる内容の豊穣さを描いた。代表作は『アルプスへの道』『森と聚落』など。

History

1839年: 福岡県福岡市中島町（現・福岡市博多区中洲）に生まれる。紙問屋児島本家第9代当主・児島善一郎の長男。

1909年: 4月、福岡県立中学修猷館（現・福岡県立修猷館高等学校）入学。; 中学3年生の頃、初めて母に絵の具を買ってもらい、福岡城址に写生に行く。この頃にはすでに画家を志望していたが、父は家業を継がせようとし、許さなかった。

1912年: 3月、福岡県立中学修猷館卒業。; 4月、長崎医学専門学校薬学科入学するが、まもなく中途退学する。児島は、医者になる気はなく、ただ、長崎は景色が良いから絵が描けるだろうという思いであったらしい。

1913年: 2月、画家を志して上京、駒込の染井に住む。

1814年: 福岡の実家から、「画家を志した以上は美術学校に入るように」との伝言があり、美術学校の入学試験を受けるために岡田三郎助が指導する本郷絵画研究所に2カ月ほど通うが、入学試験に失敗。以後、児島が師につくことはなかった。; この頃、児島はセザンヌに傾倒し、風景画を描く。

1915年: 肺を患い、帰郷。療養生活に入る。

1920年: 5年間の闘病生活を経て、回復。再び上京、板橋に居を定め、制作を始める。

1921年: 9月、第8回二科会展に『十一月風景』『早春の下板橋附近』『雪景』『麻繰工場ある風景』『早春の池畔』を出品、初入選。

1922年: 3月、東京府主催平和記念東京博覧会美術展に『肖像』を出品、褒状を受ける。; 9月、第9回二科会展に『裸女』『代々木風景（冬）』『春近き郊外』『浅き春』『横臥像』を出品、二科賞を受賞。

1923年: 二科会の招待日が関東大震災に見舞われ、しばらくは物情騒然とし、絵を描くどころではなくなったため、外遊を決意する。

1925年: 3月、欧州遊学のため出国。; 5月、パリに到着。アトリエを借り、制作に専念する。在仏中はスペイン、イタリア、ベルギー、イギリス、ドイツを旅行。

1928年: 父・善一郎死去の知らせを受け、帰国。; 9月、第15回二科会展に『立てるソニヤ』（神奈川県立美術館蔵）『横臥』『南仏風景』など滞欧作22点を特別陳列し、二科会会友となる。

1929年: 12月、二科会会員となる。

1930年: 11月、二科会を脱会し、林重義、林武、川口軌外、三岸好太郎、里見勝蔵、福沢一郎らと共に独立美術協会を創立。以降、終始同会の中心的作家として同会の発展に尽くすと共に、多くの作品を発表する。

1946年: 3月、新興日本美術展（読売新聞社主催）の審査員となる。

1949年: 第17回独立美術協会展に『静物』（東京国立美術館蔵）などを出品。; 「絵画の根本問題に対する疑惑の一つを、解決しようと思っているのです。その研究というのは、立体への処理法です。はっきりした新しい立体の処理を会得するには、もう一度ルネサンスまで返らねばならないと思うのです。苦しんできたかいもないと思ったりしますが、行きづまったら、もう一度初めからやるよりほか方法もありません。ともかく、も少し果物によって研究をつづけます。果物の静物が描けたら風景も花も人物も同じだと思います。」と、児島は静物を描き出した理由を語っている。立体の表現といっても、ここで言われている新しい立体表現とは、物に陰影をつけて立体をあらわす古典的な方法ではなく、線の組み合わせ、つまり画面の構成によって、立体を暗示しようとするもので、部分的に、初期キュービスムのフォルムを学びとっている。キュービスムでは、色彩は地味にし、フォルムを重視するが、児島は、色彩はより鮮明にし、形態と色彩で造形的に画面構成を試みている。

1951年: 第19回独立美術協会展に『アルプスへの道』（東京・国立近代美術館）『老松』を出品。『アルプスへの道』が国立近代美術館買上げとなる。; この頃より、児島は、風景にいろいろな形の雲を配し、その動きで、極めて流動的な画面を構成する。山を主にして、大きく静かに構える山に、生動する雲を対照させ、生き生きとした画面を作っている。山の稜線が幾重にもリズミカルに重なり、上へ行くほど山を囲む三角形が大きくなりながら、その形に変化をつけている。前景の道、山ハダの明るい褐色も、やはり上へ上へとリズミカルにせり上がっていき、果ては雲の中の同系統の色へとけ込む。アルプスを画面いっぱいにとり、前景の人家を小さくして、山の大きさを誇張し、自然の雄大さを表している。悠久なるものへの憧れは、この時から児島の願いとなる。

1958年: 第26回独立美術展に『森と聚楽』（長岡現代美術館蔵）などを出品。; 『森と聚楽』では一本の道が遠く続いており、画面の引き込みとして重要な役割を果たしている。その道の尽きるところに空が開け、夏の雲が、三角や円で浮いている。この三角や円の形が森に繰り返され、その下に集落が、色彩と変化を添える。空の軽やかで、透明で遠くへ行く感じは、児島が特に力を入れているところで、この絵の見せ場となっている。; 本作に限らず、児島の作品は、緑が実に美しい。これほど緑を生かし変化をつけて描けることは、児島生来の恵まれた資質によるものであろう。

1962年: 3月22日、肝臓癌のため逝去。69年の生涯を閉じる。; 5月、第5回現代日本美術展に遺作9点が特別陳列され、特別賞が贈られる。

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