小絲源太郎

こいと　げんたろう

Gentaro Koito

1887年〜1978年

東京市下谷区

作家・作品ジャンル

画家

小絲源太郎 / 画家
　1905年、東京美術学校金工科入学。傍ら、白馬会菊坂研究所に学ぶ。1910年、第４回文展に『魚河岸』初入選。金工科を卒業後、1911年、改めて西洋画科に入学。1914年、病のため同校を中退するものの、制作活動を続けて文展等で活躍。1954年、日本芸術院賞受賞。1959年、日本芸術院会員となる。1965年、文化勲章受章。

History

1887年　: 　東京市下谷区に生まれる。

1892年　: 　本郷区湯島天神下の練雪小学校に入学。

1898年　: 　小学校高等科3年の時、慶応義塾に転学したが寄宿生活を嫌って退学。湯島天神町の医者で漢学者鵜沢正躬の許に預けられ、その家より中学校に通う。; 　9月、神田の東京中学校に入学。

1904年　: 　東京中学校卒業。両親とともに初めて白馬会展に行き、藤島武二の「蝶」に感動、洋画家になることを決意する。

1905年　: 　春、藤島武二の指導する本郷曙町の白馬会駒込研究所に入り、素描を学ぶ。また、海野美盛に塑像の手ほどきをうける。

1906年　: 　4月、東京美術学校（現・東京藝術大学）西洋画科を受験したが金工科入学となる。傍ら、白馬会菊坂研究所で素描を学ぶ。

1910年　: 　10月、第4回文展に『魚河岸』が初入選。これが黒田清輝に認められ、西洋画科へ転科をすすめられる。

1911年　: 　3月、東京美術学校金工科を卒業。; 　4月、改めて西洋画科に入学。; 　10月、第5回文展に『屋根の都』（東京芸術大学芸術資料館蔵）を出品、東京美術学校買上げとなる。; 　『屋根の都』は、上野の山から逆光に見える浅草方面を当時流行し始めたモネ流の細分化された筆触で描いたもので、美術学校に通う道すがら毎朝描き継いだものだという。小絲源太郎が盛んに印象派の研究をしたことがしのばれる作品で、朝霞に霞んでぼやけた景色から早朝の爽やかな空気が感じられ、気持ちの良い風景画になっている。

1914年　: 　糖尿病のため美術学校を休学し、そのまま中途退学する。

1919年: 　この年から1925年まで展覧会には出品せず、各地に旅行して写生に励む。

1930年　: 　10月、第11回帝展に『暮春閑情』を出品し、特選となる。この作品は宮内庁買上となる。

1931年　: 　光風会会員に推される。; 　10月、第12回帝展に『獺祭図』を出品、特選となる。; 　『獺祭図』は、小絲源太郎の精密描写時代の代表作の一つ。絵から受ける印象は、オランダの静物画に近い。

1932年　: 　10月、第13回帝展に『惜春賦』（東京国立美術館蔵）を出品、推薦となる。; 　『惜春賦』は、ペルシアの三曲の衝立を背景に、ケシの花を日本画の細い筆で描いたもの。小絲源太郎が、一時かなり深く東洋画、宋元画風の精密描写に影響を受けていることが見て取れる。「日本画家の仕事のやり方と同じように、花を一枚一枚別に写生しておいて、それを一つにまとめるという方法をとり、毎日小石川の植物園や美術学校の花壇を描いて歩き、30枚ほどの花の写生ができた」と、小絲源太郎は述べている。この作品によって、帝展推薦となった。

1946年　: 　3月、第1回文部省主催日本美術展覧会（日展）に『初秋』出品。; 　10月、第2回日展に『5月の日』出品。日展審査員となる。

1947年　: 　10月、第3回日展に『乍雨乍霽』を出品。この年、日本美術展覧会参事となり、また審査員も務める。; 　小絲源太郎の生家は不忍池と上野の森との間に挟まれたところにあった。その不忍池に立つ朝の虹を「名物の蓮も、この月（6月）に入ると、ぐんと茎を伸ばして、今日のような、時化（しけ）模様の日なぞは、白い葉裏を返して、吹き行く風の姿を、そのままに見せて居る。向ヶ丘に、美しい朝虹の立つのもいまころで、古城を想わせる岩崎の洋館のあたりから、大きな虹の半円が、そのまま池にうつって、7色の輪が出来る」と描写し、「私は、よく虹を描くが、幼いころの、こんな想出が、60のいまになって、顔を出すものらしい」と結んでいる。

1952年　: 　5月、第1回日本国際美術展に『雪後』（のちに『雪の遊園地』と改題）を出品。; 　『雪の遊園地』の取材場所は、多摩川園の遊園地。制作動機については「遊園地という、本来明るい歓楽の場所が、冬枯れの、殊に雪に埋もれて、人影一つ見えない淋しさの点に心がひかれて」だとし、制作の意図については「真白い雪の中の観覧車、飛行機塔、メリーゴーラウンド、生々しい赤、黄、緑、紫等を写生のみにたよらず構成的にやってみたかった」と記している。

1954年　: 　3月、第2回国際美術展出品作『春雪』その他前年度風景諸作により、日本芸術院賞をうける。;

1955年: 　5月、第3回日本国際美術展に『湖畔』出品。

1956年: 　10月、第12回日展に『山粧ふ』出品。その後、1958年の第9回選抜秀作美術展にも出た作品。

1958年　: 　3月、従来の日展は解散し、新たに財団法人日展が発足、その評議員となる。

1959年　: 　5月、日本芸術院会員となる。

1960年　: 　財団法人日展理事となる。

1961年　: 　日展常務理事就任。

1962年: 　年末、光風会を退会。

1964年: 　5月、第6回現代日本美術展に『団地良夜』（東京都美術館蔵）出品。; 　『団地良夜』は、中秋の月の光を浴びたとうもろこしの穂越しに、団地のアパートの窓の灯をのぞむ。小絲源太郎の芸術は、常に季節感に対する鋭敏な感応がある。

1965年: 　11月、文化勲章を授与される。

1969年　: 　3月、従来の日展は新たに「改組日展」として発足、その顧問となる。

1974年　: 　10月、米寿を記念して編集された『小絲源太郎画集1911-1974』が求龍堂から発行される。

1977年　: 　2月6日、老衰のため大田区の自宅で死去。90年の生涯を閉じる。

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