熊谷守一

くまがい　もりかず

Kumagai Morikazu

1880年〜1977年

岐阜県恵那郡付知村（現・中津川市付知町）

作家・作品ジャンル

画家

熊谷守一／画家　
　明治、大正、昭和に渡り活躍した画家。二科会会員で、同会を中心に発表を続け「画壇の仙人」と呼ばれた。70年を超える画業の中で「モリカズ様式」と呼ばれる簡潔な線と明瞭な色彩で表現する作風を完成させ、70代でようやく画家としての成功を収める。自然や裸婦、身近な小動物や花など命のあるものを描いた画家で、書や墨絵をも多数残した。

History

1880年: 　4月2日、岐阜県恵那郡付知村（現・中津川市付知町）に生まれる。

1886年: 　岐阜県尋常小学校（現・岐阜大学教育学部附属小学校）に入学。高学年で水彩画をはじめる。

1984年: 　岐阜県尋常中学校（現・岐阜県立岐阜高等学校）に入学。

1897年: 　岐阜県尋常中学校2年級過程修業証書を受け取り上京。芝の正則中学校（現・正則高等学校）に転校するも1年足らずで退学。; 　その後、慶應義塾普通科2年3学期に編入して1学期だけ通う。

1898年: 　本郷区森川町（現・文京区本郷）にあった望月金鳳の画塾「共立美術学館」に入り、日本画の基礎を学びながら美術学校を目指す。

1900年: 　9月、東京美術学校西洋画科撰科（現・東京芸術大学美術学部）に入学。同級生に青木繁がいた。

1904年: 　東京美術学校西洋画科撰科を首席で卒業。; 　卒業後、1907年まで、同校西洋画科研究科に籍を置く。

1909年: 　第３回文部省美術展覧会に『蝋燭（ローソク）』（岐阜県美術館蔵）を出品、褒状を受ける。; 　現在は作品全体が薄暗く、蝋燭を中心とした部分しかよくわからないが、「着物の模様なんかも薄くかき込んだのにそれがすっかり消えている」（『へたも絵のうち』）と、熊谷は語っている。

1910年: 　白馬会第13回絵画展覧会に『轢死』（岐阜県美術館蔵）、『習作』を出品。; 　実母の死を機に故郷に帰り、そのまま付知で6年を過ごす。

1916年: 　再び上京して第3回二科会展に『赤城の雪』などを出品、二科会会員に推挙される。

1928年: 　次男・陽が急死。陽を描いた『陽（陽の死んだ日）』（大原美術館蔵）を制作。; 　「次男の陽が4歳で死んだときは、陽がこの世に残すものが何もないことを思って、陽の死に顔を描きはじめましたが、描いているうちに”絵”を描いている自分に気づき、いやになって止めました」（『蒼蠅』）と、後年、熊谷は語っている。

1929年: 　9月、東京府四谷に開設された二科技塾（後の二科美術研究所）で週1回、約10年間にわたり指導する。

1930年代より: 　日本画（水墨画）制作をきっかけに、画風が大きく前進する。

1932年: 　豊島区長崎町（現・千早町）に移り住み、生涯にわたりここで生活する。

1936年: 　9月、第23回二科展に『山形風景』『長良川』などを出品。; 　この頃より、赤の輪郭線を用いるようになる。

1937年: 　浜田葆光に墨絵を勧められ、この頃から日本画、水墨画を本格的に描きはじめる。

1938年: 　『蒲公英（たんぽぽ）に蝦蟇（がま）』を制作。; 　ガマがタンポポを食すわけでもなく、タンポポの花に鼻を寄せる行為がありうるかは考えないとして、「タンポポの香にひたって恍惚境にある蝦蟇の表情、姿がよく描かれている」と、美術収集家・木村定三は解説している。また、「法悦感は作者にそれがあってこそ表現が可能である」とも評価している。; 　木村氏は、熊谷の作品を高く評価し、後に熊谷の最も良き理解者となり、熊谷芸術を支えた。

1940年代より: 　日本画で用いた太い線は油彩画でも取り入れられ、1940年頃から赤茶色の太い輪郭線で対象を区切るようになる。

1953年: 　この頃に、「モリカズ様式」と呼ばれる画風が定着する。; 　モリカズ様式とは、輪郭線を赤い線で描き、その線を塗り残す方法のこと。支持体である板や画布に、赤鉛筆や木炭、もしくは鉛筆で輪郭線を描き出し、そこに絵の具が入らないように塗り残している。形態は簡潔で、色彩は明瞭に描くところも特徴の一つ。

1955年: 　この頃から画中のサインが漢字からカタカナとなり、「モリカズ様式」が確立される。

1956年: 　長女・萬の亡骸を火葬し、その帰りの情景を描いた『ヤキバノカエリ』を制作、第2回現代美術展に出品。; 　骨箱を持つ男性は長男・黄、その左の女性は次女・榧、右端の白ひげの男性が熊谷である。戦後間もなく、復興の進まない火葬場からの道を歩く三人の姿は、直接的に描かれたものではなく、その情景を絵画化したものである。

1963年: 　11月、文化功労者として顕彰される。

1964年: 　パリのダビット・エ・ガルニエ画廊で個展を開催。; 　11月、叙勲、勲三等旭日章受章。

1967年: 　『月夜』（熊谷守一つけち記念館蔵）制作。月夜の屋外にうずくまる裸婦が描かれている。本作の背景は水彩画『月夜』から始まり、『轢死』でも用いられ、『月』にも登場している。; 　裸婦作品は熊谷が美術学校在学時から晩年まで描き続けており、表現の変遷を読み取ることができる基調なテーマである。熊谷が描く裸婦には目鼻がない作品が多数あるが、顔を描かなかったのは「情が移るから」なのだとか。表情が読み取れる目鼻が描かれていないことで、作品全体の色彩や形態の構成が際立っている。; 　文化勲章の内示を受けるも辞退する。

1972年: 　勲三等叙勲の内示を受けるも「お国のためには何もしていないから」と辞退する。

1976年: 　6月、郷里の岐阜県恵那郡付知町に熊谷守一記念館（現・熊谷守一つけち記念館）が開館。; 　11月、日本洋画商協同組合展に『アゲ羽蝶』を出品。油絵ではこの作品が絶筆となる。

1977年: 　8月1日、肺炎のため97年の生涯を閉じる。

1985年: 　「熊谷守一美術館」が居住跡（東京都豊島区千早町）に開館する。

▼参照サイト

http://kumagai-morikazu.jp/about-morikazu/history.html

▼参考書籍

・もっと知りたい熊谷守一 ―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)

・熊谷守一：目に見えないものを (ミネルヴァ日本評伝選) | 古川秀昭 |本 | 通販 | Amazon

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