運慶

うんけい

Unkei

1150年頃〜1223年

関西

作家・作品ジャンル

運慶／仏師
　鎌倉時代、鎌倉幕府の支援を受けながら、京都・奈良・鎌倉の三都において活躍した仏師。父である大仏師・康慶の強力な支援と卓越した技量により活躍の場を広げ、『鎌倉彫刻』を完成させた。デビュー作は、奈良県・円成寺の『大日如来坐像』。奈良県・東大寺の復興造像に携わり、現存している南大門の金剛力士立像を造像したことでも有名。

History

1150年頃: 　大仏師・康慶のもとに生まれる。（詳しい出生は不明）; 　康慶は、奈良仏師の康助（ごうじょ）または康朝（こうちょう）の弟子とされ、運慶は後に、康朝の子息・成朝（せいちょう）に代わって奈良仏師の主流となる。

1176年: 　奈良県・円成寺（えんじょうじ）の『大日如来坐像』（国宝）を造像。本像は、まっすぐに伸びた背筋、胸の前でゆったりと印を結ぶ両手、弾力のある頬や形が印象的で、宝冠の下からのぞく、櫛でといたような細い髪の毛の彫りも美しい。この頃から、凸レンズ上の水晶に瞳を描いて裏からはめ込む新技法「玉眼」が使われているのも、特徴である。台座の蓮華座裏面には、「大仏師康慶　實弟子運慶（花押）」の銘文があり、大仏師・康慶の拾弟子（子息）であった運慶により制作されたことがわかる。; 　父・康慶の強力な支援と卓越した技量により、運慶は活躍の場を広げていく。

1186年: 　北条時政が創建した、静岡県・願成就院の『毘沙門天立像』（国宝）、『不動明王』、『二童子立像』、『毘沙門天立像』を造立。東国武士・鎌倉幕府と結びついたことが、飛躍の契機となる。

1189年: 　有力御家人・和田義盛が創建した、神奈川県・浄楽寺（じょうらくじ）の『阿弥陀如来坐像（阿弥陀三尊像）』（重要文化財）を造像。この時代、人々は戦いや飢え、病など、死と隣り合わせの中で暮らしており、運慶が作った仏像は、時代の祈りに応えたものである。衣から除く厚い胸や太くたくましい腕からは、その下に存在する肉体のボリュームが感じられ、頼れば守ってくれそうな力強さを感じさせる。; 　この後、運慶は草創期の鎌倉幕府に重用され、近年では鶴岡八幡宮（寺）や建久年間前半に整備された鎌倉幕府の大寺院の一つである永福寺（ようふくじ）において、多くの造仏に携わった可能性が高いことが推定されている。

1193年頃: 　密教世界の中心にあり、真理そのものの象徴とされる『大日如来坐像（重要文化財）』（東京都・真如苑真澄寺蔵、半蔵門ミュージアムで公開中）を造像。本像は、運慶の初作とされる奈良・円成寺像などと同じく、智挙印を結ぶ金剛界大日如来坐像となる。頭部は髻（もとどり）を高く結って、毛筋彫りを見事に表し、体は堂々として両肩を引いて胸前に大きく空間を取っている。目には玉眼を施し、いささか寄り眼気味となっており、写実的で豪快な運慶の作風を良く表している。また、X透過線写真撮影等により、五輪塔形の扁平な角柱を中心に、五輪塔形舎利容器、蓮台にのった水晶珠が、密閉された像内に納入されていることが判明している。

1194年: 　6月から8月にかけて、奈良県・東大寺の大仏殿内の大仏の両脇侍が復興され、虚空蔵菩薩像は康慶と運慶によって制作され、如意輪観音像は快慶（運慶の門弟）と定覚（運慶の次弟）によって造像されている。この時、2体ともそれぞれ半身ずつを造り、後で合体するという方法がとられており、70日ほどで完成させている。; 　8月から12月にかけて、四天王像の持国天を運慶が、増長天は康慶が、広目天は快慶が、多聞天は定覚が、各120日間で復興を行っている。

1203年: 　奈良県・東大寺南大門の『金剛力士立像』（国宝）を造像。東大寺復興最後に再建された仁王像で、近年の修理に伴う調査によって、運慶を総監督として運慶と快慶が口を開いた『阿形像』を、湛慶（運慶の嫡男）と定覚が口をへの字に結んだ『吽形（うんぎょう）像』を担当したことが判明し、それぞれ69日間で完成させていることが明らかになっている。; 　流れるような衣服の質感、迫力あふれる表情と力強い立ち姿など、運慶の特徴がいかんなく発揮されている。; 　造像の功績を認められ、僧位として最高の「法印」の位を得る。

1212年: 　奈良県・興福寺北円堂で9体の造像を手掛ける。『弥勅如来坐像』『無著像』『世親像』（すべて国宝）の3体は、運慶が目指した鎌倉彫刻の完成の域。（ほかの6体は後世に入れ替わっている）

1216年: 　神奈川県・称名寺の子院・光明院の『大威徳明王坐像』造像。本像は、運慶の晩年期における鎌倉幕府関係の造像で唯一の現存作例である。本像は平成19年春に、その納入品「大威徳種子・梵字三身真言・梵字愛染真言・梵字千手陀羅尼」の奥書から、1216年11月23日に「源氏大弐殿」が、大日如来、愛染明王とともに造立したもので、作者は「肥中法印運慶」と判明した。; 　発願者の「源氏大弐殿」とは『吾妻鏡』にも登場する加賀美遠光（かがみとおみつ）の娘で、源頼家や実朝の養育係を勤め、その実朝将軍御所において女房の筆頭的存在だった大弐局とみられている。「肥中法印運慶」とは、すでにその頃、東大寺総供養で法印となっていた運慶のことである。; 　なお、本像が大日如来・愛染明王とともに造立されたのは、大日如来は釈迦と、愛染明王は金剛薩埵（こんごうさった）を介して普賢菩薩と、大威徳明王は文殊菩薩とそれぞれ同体とされることから、釈迦如来・普賢菩薩・文殊菩薩の釈迦三尊を密教的に解釈した尊像構成と考えられる。; 　本像の太づくりながら引き締まった体は、運慶のこれまでの作例に相通じる。また、恐ろしげながら端整な面持ちは、やや下膨れの卵形の面部に、目鼻口を小さめに表して中央に寄せ気味にしたことにより表現されている。本像は、小像ながら、運慶の作風がよく表れている。; 　これらの復興を通して、前時代の様式を打ち壊し、天平彫刻に迫ろうとした古典の再生と、新たに宋の仏教文化を摂取するという、新時代を見据えた改革の跡が見られ、後世、『鎌倉彫刻』と評価される新様式が生まれることとなった。

1223年: 　74歳の生涯を閉じる。

▼参照書籍

・運慶・快慶と慶派の美仏 (エイムック 4166) | エイ出版社編集部 |本 | 通販 | Amazon

・Amazon.co.jp - 仏師から見た日本仏像史:一刀三礼、仏のかたち | 江里康慧 |本 | 通販

あい古物買取サービスでは
骨董品、古道具、美術品、コレクション品の
出張買取をしています。

京都、滋賀、奈良、大阪、兵庫、三重、岐阜、愛知、福井を中心に、ご自宅まで出張査定にお伺い致します。※ 良品は全国出張買い取り可能です。

どんな些細な事でもかまいませんのでまずは一度お電話にてご相談下さい。

あい古物買取サービスでは骨董品や古道具のリサイクルを通して、古い文化を次世代に残し伝えるとともに、微力ながら持続・再生可能な社会作りに貢献したいと考え活動しています。