平山郁夫

ひらやま　いくお

Hirayama Ikuo

1930年〜2009年

広島県

作家・作品ジャンル

画家

平山郁夫／日本画家
　1930年、広島県生まれ。45年、被爆し、九死に一生を得る。52年、東京美術学校（現・東京藝術大学）日本画科卒業。53年、『家路』で院展初入選。98年、文化勲章受章。平和をテーマにした「伝来」と「シルクロード」シリーズが有名。ユネスコ親善大使、文化財赤十字活動を提唱する文化財保護・芸術研究助成財団の理事長なども勤めた。

History

1930年: 　広島県豊田郡瀬戸田町（現尾道市瀬戸田町）の、父・峰市、母・ヒサノの次男、4男5女の3番目として生まれる。平山家は300年以上も続く旧家で、菩提寺の寺伝によれば、初代の柴田孫左衛門は、戦国武将柴田勝家の孫だとされている。

1943年: 　瀬戸田国民学校を卒業後、広島市・私立修道中学校に進学。

1945年: 　修道中学校3年在学時、学徒勤労動員先の広島陸軍兵器補給廠（現・広島大学医学部、爆心から3km）で被爆、九死に一生を得る。この時の経験が、後に『仏教伝来』をはじめとする仏伝とシルクロード連作へ続く画業の原点となる。; 　被爆による体調不良のため、広島県立忠海中学校（現・広島県立忠海高等学校）に転校。

1947年: 　忠海中学を4年で修了後、旧制東京美術学校（現・東京藝術大学）日本画科予科に入学。美術学校で、小林古径、安田靫彦教授らの指導を受ける。; （在学中の1949年に東京藝術大学が発足、東京美術学校は52年に廃校となる）

1952年: 　旧制東京美術学校最後の卒業生として日本画科を卒業。卒業制作『三人姉妹』は学校買い上げとなる。; 　東京藝術大学美術部日本画科副手に就任、主任教授に就任した前田青邨に師事し、その後助手となる。

1953年: 　第38回院展で『家路』（広島県立美術館蔵）が初入選。

1955年: 　第40回院展に『浅春』が入選、日本美術院院友に推挙される。

1959年: 　第44回院展に『仏教伝来』（佐久市立近代美術館所蔵）が入選。「死ぬまでに1作でいいから平和を祈る作品を残したい」という願いから生まれた本作は、美術評論家・河北倫明に注目され、翌年の選抜秀作美術展に一般出品作から唯一選ばれ出品される。; 　『仏教伝来』は、平山の画業である「伝来」と「シルクロード」シリーズの記念碑的作品となり、自身が「画家としての本当のスタート」と語る転機となった。

1962年: 　第47回院展に『受胎霊夢』『出現』で再び日本美術院賞（大観賞）を受賞。; 　第1回ユネスコ・フェローシップに選ばれ、6ヶ月間ヨーロッパに留学。イタリア・フランス・イギリス・オランダ・ドイツの5カ国を歴訪し、各地の古い寺院・遺跡や美術館を訪れる。ヨーロッパの宗教美術の伝統に触れ、自分の進むべき日本画の将来は、西洋の美術がキリスト教を背景とするように、仏教を背景としたインド・シルクロード・中国という分厚い東洋の伝統を背負ったものでなくてはならないという決意を生んだ。

1963年: 　第48回院展に『建立金剛心図』で奨励賞（白寿賞・G賞）を受賞、文部省買い上げとなる。

1964年: 　第49回院展に『仏説長阿含経巻五』『続深海曼荼羅』を出品、文部大臣賞を受賞。; 　『受胎霊夢』から『仏説長阿含経巻五』にいたる一連の作品に対して、第4回福島繁太郎賞を贈られる。

1966年: 　東京藝術大学第1次中世オリエント遺跡学術調査団に参加し、トルコ・カッパドキア地方の洞窟修道院の壁画模写に従事する。この訪問が、「シルクロード」シリーズの出発点となる。以後、取材旅行は中近東・中央アジア・インド・中国など160回をこえ、その行程は40万キロにおよぶ。その間に描かれたスケッチブックは200冊近くにおよび、スケッチ点数は4,000点を超え、数々の作品が生み出される。

1967年: 　約1年間、法隆寺金堂壁画再現事業に携わり、第3号壁を担当。

1968年: 　アフガニスタン、ソ連邦ウズベク共和国を取材。本格的シルクロード取材の端緒となる。

1969年: 　東京藝術大学美術部日本画科助教授に就任。

1973年: 　東京藝術大学美術部教授に就任。; 　文化庁から高松塚古墳壁画の現状模写を委嘱され、模写班の責任者として従事する。

1974年: 　バチカン美術館に新作『古代東方伝教者』を寄贈、ローマ法王パウロ6世に謁見し、大聖グレゴリオ騎士銀褒章を贈られる。

1975年: 　中国人民対外友好協会の招きで、日本美術家代表団の一員としてはじめて中国を訪れ、北京、大同、上海、西安などをめぐる。以後、毎年のように中国を訪問する。

1976年: 　平山郁夫シルクロード展が日本橋・高島屋などで開催され、この新作展によって、新潮文芸振興会からの第8回日本芸術大賞を受賞。

1977年: 　仏教伝道協会から第11回仏教伝道文化賞（文芸・芸術部門）を受賞。

1978年: 　第63回院展に『画禪院青邨先生還浄図』を出品、内閣総理大臣賞を受賞。

1981年: 　日本美術院理事に就任。

1987年: 　日本放送協会（NHK）の第38回放送文化賞を受賞。

1988年: 　東京藝術大学美術学部長となる。; 　文化財保護振興財団が発足、理事に就任。; 　ユネスコ親善大使に任命される。

1989年: 　東京藝術大学第6代学長に就任。

1993年: 　芸術研究振興財団理事長に就任。; 　文化功労者として顕彰される。

1994年: 　文化財保護振興財団理事長に就任。

1995年: 　スイス・ダボス会議でクリスタル賞を受賞。; 　カンボジア・アンコールワット遺跡、中国・敦煌遺跡、南京城壁、海外の主要な美術館が所蔵する日本古美術修復援助など、滅びつつある世界の文化遺産の保護・救済のため、世界文化財赤十字構想について講演。

1995年: 　東京藝術大学学長を退任。

1996年: 　日本美術院理事長に就任。

1998年: 　文化勲章受賞。

1999年: 　日本人としてはじめて、アメリカ・スミソニアン協会のジェームズ・スミソン賞を受賞。

2001年: 　国際文化交流に貢献した個人・団体に贈られる国際交流基金賞を受賞。; 　再び、東京藝術大学第8代学長に就任。

2002年: 　中国文化省・文化交流貢献賞を受賞。

2004年: 　画家としての長年の業績と、文化遺産保存への国際的貢献が評価され、朝日賞（朝日新聞文化財団）を受賞。; 　高句麗古墳郡の世界文化遺産の登録に寄与した功績に対して、韓国政府から修交勲章興仁賞を受賞。

2009年: 　脳梗塞のため、79年間の生涯を閉じる。; 　生前の功績に対し、從三位が追贈される。

▼参照文献

平山郁夫の世界大型本

平山郁夫 (別冊太陽日本のこころ) ムック – 2011/5/26

▼参照サイト

平山郁夫美術館

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